こんにちは。地域情報発信ライターのFUNEです。
今回は、Yahoo! 地域クリエイターとしてお届けする最終回。
念願だった豊丘村の「HAPPY DAYS」を訪ね、ムッシュ松尾さんにじっくりお話を聞かせていただきました。
素敵なお店の空気に合わせて、今回はラジオ番組のような掛け合いでお送りします。
フレンチポップ、古着、昭和レトロ、モダン、アート、カルチャー。そんな言葉に少しでも心が動く方なら、きっとこの先の話も気になるはずです。
■河岸段丘の村に輝く、キュートな異彩
FUNE: 皆さんこんにちは。
今日は長野県下伊那郡豊丘村の情報です。
豊丘村ののどかな風景の中、簡易郵便局に隣接した、ともすると通り過ぎてしまいそうになる小さなお店。しかし、小さくてもキュートな異彩を放っている名店である「HAPPY DAYS」をご紹介します。
ここは、単なる雑貨屋ではありません。
店主「ムッシュ松尾」こと松尾晃さんが長年集めてきた、60〜70年代のアート、ヴィンテージ本、そして数千枚のレコードがひしめく“記憶の宝物庫”のような場所。独自のサブカルチャーを発信し続けてきたこの空間は、個人的にはパワースポットのようにも感じられます。本日はどうぞよろしくお願いします!
ムッシュ松尾さん(以降、ムッシュ): はいはい、いらっしゃい。どうぞゆっくりしていってください(笑)。
FUNE:(心の中で拝む)

■第1章:農協職員、インドへ行く。ムッシュの意外な素顔
FUNE: いまでは白髭に赤いメガネがトレードマークのムッシュですが、その感性は突然生まれたわけではないんですね。
ムッシュ: そうそう。少年時代、自作ラジオから流れてきたビートルズに衝撃を受けてね。『宝島』や『POPEYE』を教科書みたいに読みながら、ずっと都会の新しい文化や空気を観察してきたんですよ。
農協職員として働いていたころは、まだ口髭だけでしたけどね。それがトレードマークみたいな農協職員でした(笑)。でも、心の中にはいつもビートルズやボブ・ディランが流れていた。一旦退職をして、インドへ旅したこともありますよ。

FUNE: インド!? それはもしや…サイケデリックな感覚を求めて…ですか?
※サイケデリックについての補足:極彩色や幻想性、不思議な高揚感を伴う表現。60〜70年代の音楽やアートを語るうえで欠かせないキーワード。
ムッシュ:そうそう、サイケデリックと一言でいっても、アレン・ギンズバーグやジャック・ケルアックの系譜や、モロッコなんかにも起点があったりいろいろあるけどね、ビートルズもそうだけど、やっぱりインドだっていうので、行ったんですよ。
奇しくも、ちょうどジョンレノンが銃殺された日の2日後だったと思います。
FUNE:すごく象徴的なタイミングで旅に出られたんですね! まさにサイケデリック文化が隆盛している時代にその原点のインドへ向かう松尾さん。カルチャーの熱源そのものに、強く惹かれていた人なのだとあらためて感じます。
豊丘村を拠点に生きてきた一方で、精神は常に世界の文化や未知の土地へ向いていたんですね。
ムッシュ: 僕は全部独学なんですよ。田舎には情報がないからね。
インドのあとはニューヨークも行きましたよ。雑誌の隅にある広告を頼りに東京へ「偵察」に行ったり。ジャズ喫茶やロック喫茶などのチラシやマッチを片っ端から持ち帰って、知識をためたりしてね。
FUNE:はぁ〜、なるほど。インド、ニューヨーク、東京、松本……いろんな遠方の町の素敵な情報が、松尾さんの目を通して豊丘村に集まっているという訳ですね。HAPPYDAYSの原点を感じます。

■第2章:1999年、豊丘村に花開いた「インスタントカフェ」の自由
FUNE:1999年11月にこの場所をオープンさせた時は、今とは違う「インスタントカフェ」という形態だったんですよね。
ムッシュ: そうそう。入場料として500円もらってね。中はセルフサービス。インスタントコーヒーやコーラも自由に飲めたり。イームズの椅子に座って、僕が持っている本やレコードを好きなだけ楽しんでもらう。今で言えばコワーキングスペースにも少し似ているかもしれません。けれど、もっと自由で、もっと趣味に寄っていた。そんな店は当時日本でここだけだったんじゃないかなぁ。
FUNE:お客さんは一度来ると半日はお店で過ごしていったんだそう。なんて贅沢な時間なんだろう。私も当時のお店にもお邪魔したかったです。当時は、白黒のフリーペーパーを1200部も発行して、全国に発送もされていたんですよね?
ムッシュ: 記事は僕が書いて、デザインやイラストはカミさんが担当してね。夫婦でそういう「可愛くて他にはない」世界観を作っていったんです。コンビニで夜な夜なコピーを取って作っていました。当時、日本のカフェブームの発祥地と言われるような全国の有名店が置いてくださっていました。
豊丘村という田舎にいながら、僕たちは確実に全国の最先端のカルチャーと繋がっていたんです。
FUNE:白黒の紙に刷られたその小さなフリーペーパーもまた、当時のHAPPY DAYSそのものだったんですね。可愛いのに少しアングラで、地方から全国へ、つながっていくための回路だったんですね。Webが主流になった今では感じることが少なくなった、“自分の好きなものを見つける感動”のある景色が思い浮かびます。

■第3章:飯田下伊那に存在した「伝説級」の文化圏
FUNE:お話を伺っていると、この飯田下伊那エリアには、当時かなり熱い文化の動きがあったようですね。
ムッシュ: それはもう「一大文化史」ですよ。「ブルーブランシェ」という姉妹が営む、日本でも有数のフレンチカルチャーを発信する拠点が上飯田にあったり。
それから、僕も、たぶん飯田下伊那ではじめてガレージセールというのをやったりね。そこでレコードを持ってきた細田君たちがポータブルステレオでフリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴ、フランス・ギャルやセルジュ・ゲンズブールを鳴らしていたんです。
※細田君についての補足:現在もHAPPY DAYSはじめ各地でDJイベントを開催するレコードコレクター

FUNE:あぁ!渋谷系ですね!流行りましたよね!
ムッシュ: いや、僕からしたらね、衝撃だったんです。「なんで君ら、この古いフランス・ギャルやセルジュ・ゲンズブールを、今一番かっこいいものとして知ってるの!?」って。僕の中にある「古い引き出し」が、彼らの感性とガチャンと繋がった瞬間です。
その当時、飯田のガレージセールでレコード売っていた細田君の仲間の中には、今、岐阜に住んでいる佐藤君も居てね。彼の店には日本のトップクラスのDJ達がレコードを買いに来るみたいです。次元の違う熱気があったんですよ。

FUNE:おぉ!まさにレコードコレクターズの世界ですね。
団塊世代のムッシュ松尾さん、その場所に通った90年代の若者たち、そして今またGLIM SPANKYを入り口に惹かれてくる若い世代もいらっしゃる。時代は違っても、60年代以降の音楽や美意識を核にして人がつながっていく。その循環自体が、この店の面白さなのかもしれませんね。
そんな濃密な時間を支えてきたのは、派手な理念だけではありません。ムッシュ松尾さんの日々の暮らしそのものにも、「HAPPY DAYS」の精神が息づいていたんですね。

■第4章:ムッシュの「ハッピー」な日常
鋭い審美眼を持つ人というと、気取った暮らしを想像するかもしれない。けれど、ムッシュ松尾さんの“ハッピー”は、むしろ地に足のついた日常の中にありました。
FUNE:他にはないような個性的な感性をお持ちのムッシュですが、日常もとっても素敵ですね。よく阿島のラーメン屋さんまでお散歩に行かれるとか。
ムッシュ: ああ、そうですね。散歩がてらに、近所の居酒屋やラーメン屋で一杯やる時間が大切なんです。僕はのんべいだから(笑)。あえてスノッブなものじゃなく、地元のスーパーにあるワンカップとか、安いトリスウイスキーを「うまい!」と言って飲むのがいいんですよ。
FUNE:世界のカルチャーを知り尽くしていても、最後に“うまい”と言うのは地元スーパーのワンカップやトリス。そんなところに、ムッシュ松尾さんの美学が見えるような気がします。地に足のついた生活があるからこそ、あの唯一無二の空間が維持されているのかもしれませんね。
ムッシュ: パーフェクトじゃなくていい、ハッピーであればね。それが『HAPPY DAYS』の精神なんです。
FUNE:そんな文化の循環を生んできた空間も、ずっと当たり前に続いてきたわけではないそうですね。

■第5章:SNSで繋がる「新しい時代」と、これからの冒険
コロナ禍では1年半以上休業した時期もあり、再開を待ち望む声が絶えなかったという。
それでも「HAPPY DAYS」は終わらなかった。いまはSNSを通して、新しい世代ともつながり始めている。
FUNE:最近はX(旧Twitter)でも積極的に情報を発信されていて、全国の若いファンとも交流されていますね。
ムッシュ: 今はSNSで僕の「偏愛」に共鳴してくれる人とすぐ繋がれる。ありがたいことに『POPEYE』Webチームが取材に来てくれたり、全国から聖地巡礼のように訪ねてきてくれる人たちがいたり、昭和レトロが大好きな小学生がわざわざ買いに来てくれたりね。

FUNE:今後も、アンダーグラウンド音楽シーンをけん引するDJを呼んだり、1500点以上の「マッチ展」など、ワクワクするイベントをたくさん予定されているとか。
ムッシュ: 面白いものに出会うと、1個が10個、100個とはまっちゃう。それらが頭の中でスパークして、新しい表現になる。まだまだやりたいことは尽きません。
FUNE:営業日やイベントの最新情報は、「HAPPY DAYS」の公式X(旧Twitter)で発信中とのこと。お出かけ前にぜひチェックしてみてください。

■エピローグ:何もない場所から生まれる、究極のオリジナル
FUNE: 豊丘村で、自分の『好き』を貫き通す。それは孤独だったかもしれないけれど、その「オリジナル」は、今や全国から人を惹きつける宝物になりました。
ムッシュ: 「価値がないものに価値を見出す」のが僕の仕事です。
結局、自分が好きなことをし続けるのは、地元が一番でした。東京の真似じゃなく、ここで孤独に熟成させた「自分だけの世界」には、どこにもない価値があるんです。
FUNE:自分の「好き」で世界を面白くする。ムッシュの生き様は、現代の私たちに大切なことを教えてくれます。今日は本当にありがとうございました。
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いかがでしたか。髭のムッシュのディープな世界はいつでも豊丘村の赤い扉の向こうにありますよ。ぜひ、あなたも一度足を運んでみてくださいね。

基本情報
店名:HAPPY*DAYS
住所:〒399-3202 長野県下伊那郡豊丘村神稲9075-1
営業時間:10:00~17:00定休日:日曜日・月曜日
連絡先:090-5422-3070
最新情報:営業日の情報は、HAPPY*DAYS のX(旧Twitter)をご確認ください。
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